沖縄タイムス「唐獅子」掲載 提供 有限会社 南謡出版
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うちなあんちゅの「本質」 (掲載 2007.6.22)
日本語版 うちなあぐち版
 
 本土に移住した経験のある者の多くは、沖縄にいたころより沖縄がよく見えるという。沖縄人を知るのに、ヤマト人との比較は有効かもしれない。

沖縄の集落には必ず御嶽がある。その参拝は、自治会の重要行事だ。父の時代の年中行事に、ティラ参エ(拝所巡り)があった。早朝から十か所近くを巡る。その日は、行き交う人々も参拝者であった。家庭でも何とか御願というのが多く、火ヌ神に祈る母の姿をよく見た。ユタは王府の弾圧にもかかわらず、根強い需要に支えられ根絶されなかった。昔は戦の際は、戦場に神女も配した。

首里城の守礼門に、「守禮之邦」の扁額がある。「禮」は、儒教上の「禮」で、琉球が「野蛮国でない」ことを儒教の国、中国向けに示したに過ぎない。その首里城内にも十の御嶽がある。沖縄人は上から下まで、「祈り(祭)の民」だ。

司馬遼太郎は、作家丸谷才一氏との対談の中で、日本および日本人は鎌倉時代以後に生まれ、平安以前の王朝文化は外国だと言う。鎌倉時代といえば、反政府勢力として台頭した武士階級が、皇室の律令制を骨抜きにし、日本型軍事政権をはじめた時代である。戦国時代を経て、最終的に軍事政権を掌握した徳川家康や武士階級が「学習したもの(戦国の教訓)」が、ヤマト人の精神文化に影響し、アジア的なものから変質(日本化)していく。その枠外にあった沖縄人は、東アジア的要素を残す。

本土の詩歌は、和歌・俳句などに形式化され、わび・さびが発達したが、沖縄のそれは、一部が琉歌形式への移行したものの、八重山古謡などにみられる自由形式をも残し、古代的おおらかさを持つ。和歌・俳句は「詠む」ものだが、沖縄の琉歌・詩は主に「歌い踊る」。

ヤマト人は、弥生人(主に朝鮮人)および彼らと縄文人との混血が混在するといわれ、沖縄人は、縄文人の形質を多く残しているという。

琉球語は、日本・朝鮮語系の南限に位置する。その三母音や語彙なども含め、日本祖語が被さる以前の南島語の特徴を残す。

人と文化は時と枠によって作られてきた。だがまた、土台も上層(新しい文化)に影響する。沖縄人は、今でも外来文化を「沖縄化」する文化力を持っている。

 

    御嶽=うたき

    ティラ参エ=てぃらめえ

    御願=うぐゎん

    戦=いくさ

火ヌ神=ひぬかん
注:字数等の関係で「唐獅子」と文言が違うところが若干あります。
 
 本土(やまとぅ)んじ暮らちゃるくとぅぬあぬ人ぬ多(うふ)くお、沖縄んかい居(をぅ)たるばすやか沖縄がゆう見いゆんでぃぬくとぅやん。うちなあんちゅぬくとぅ知るたみねえ、ヤマト人とぅ比(く)なびゆるくとぅがるましやるはじ。

沖縄んかいやシィマぬかじ、必(かんな)じ御嶽(うたき)ぬあん。うぬ御願事お自治会ぬうふしくちやん。父(すう)ぬ時代ぬ年中行事んかい、てぃら詣え(御願所(うぐゎんじゅ)巡い)ぬあたん。夜(ゆ)ぬ明きてぃちゃあっから十近く巡ゆん。うぬ日(ふぃい)や、行遇(いちゃ)ゆる人んちゃあんむる拝(をぅが)まあたあやたん。家庭(ちねえ)んじん何々(ぬうぬう)御願んでぃゆしぬまんでぃ、火ぬ神拝むぬあんまあ姿(しがた)ゆう見ちゃん。與多(ゆた)あ王府なかい、あいゆかん、くなあさってぃん、どぅく買(こ)うやあぬまんでぃ種切(さにじ)りさりいるくとおねえらんたん。昔(なかし)え戦ぬばすお、戦場(いくさば)んかい神女(かみんちゅ)んそうてぃんじゃるむんやん。

首里城(うぐすく)ぬ守礼門(上ぬあやじょう)んかい、「守禮之邦」ぬ扁額ぬあん。「禮」や、儒教上ぬ「禮」なやい、琉球が「野蛮国あらん」くとぅゆ儒教ぬ国、中国向きてぃ見しゆるたみぬむんどぅやたる。うぬ首里城ぬ内んかいん十(とぅう)ぬ御嶽ぬあん。うちなあんちゅお、上(ゐい)から下(しちゃ)までぃ、「拝みん(祭)ぬ民(ちゅ)」どぅやる。

司馬遼太郎や、作家丸谷才一氏とぅぬ対談ぬ中うとおてぃ、日本うりに日本人や鎌倉時代後(あとぅ)んじ生(ん)まりやい、平安前(ひいあんめえ)ぬ王朝文化や外国(ぐゎいくく)どぅやるんでぃ言ちょをん。鎌倉時代んでぃ言いねえ、反政府勢力とぅさあい台頭しちゃる武士階級が、皇室ぬ律令制ゆ壊(こう)ち、日本型軍事政権はじみたる時代やん。戦国時代通(とぅう)ち、最終的に軍事政権まるちゃる徳川家康んでえ武士階級が「悟(さとぅ)たるくとぅ(戦国ぬ教訓)」が、ヤマト人ぬ精神文化んかい影響し、アジア的なむぬから変わてぃ(日本化)いちゅん。うぬ枠外んかいあたるうちなあんちゅお、東アジア的要素残ちょをん。

本土ぬ詩歌や、和歌・俳句んでえんかい形式化さってぃ、わび・さびぬ発達さしが、沖縄ぬ詩歌(うた)や、ていげえや琉歌形式んかいかわてぃ行(ん)じゃるむんやしが、八重山(ええま)古謡んでえねえし自由形式ん残(ぬく)ち、ああまん世ぬゆちさぬあん。和歌・俳句や「詠む」むんやしが、沖縄ぬ琉歌(るうか)・詩や、てえげや「歌やい踊(をぅどぅ)ゆん」。

ヤマト人お、弥生人(いいくる朝鮮人)また彼(う)ったあとぅ縄文人とぅぬ血が混んちょをんでぃ言ゃってぃ、うちなあんちゅお、縄文人ぬ形質多く残ちょをんでぃぬくとぅやん。

琉球語や、日本・朝鮮語系ぬ南限ぬんかいあん。うぬ三母音んでえ語彙んでえん併あち、日本祖語ぬ覆(うす)ゆる被さる前ぬ南島語ぬ特徴残ちょをん。

人とぅ文化や時とぅ枠にゆてぃ作らってぃちゃん。やしがまた、土台(にい)ん上層(新文化)んかい影響すん。うちなあんちゅお、今ちきてぃ外来文化ゆ「沖縄化」すぬ力(てえ)持っちょをん。