日本語
@今から、黍の葉を削ぎに行くつもりだ。Aもう、酒は飲まない積もりだよ。
Bどちらへのお積もりですか。
C那覇の町に買い物しに行く積もりさ。
D彼も、一緒に、行くとの事だよ。
うちなあぐち
@今(なま)から、黍(ううじ)葉(ばあ)かさしいがんちやん。(んでぃちやん)Aなあ、酒(さき)え、飲(ぬ)まんちやんどお。否定
Bまあんかいんちやいびいが。丁寧・疑問
C那覇(なあふぁ)ぬ町(まち)んかい買(こう)い物(むん)しいがんちやさ。
D彼(あり)ん、まじゅん、行(い)ちゅんちやんでぃさ。
【解説】「やん」は「である」等を表わす存在動詞としての意味の他に、「―の」を表わす助詞「んち」、「んでぃち」を伴って、「―(をする)つもりである」等と意思を表わす助動詞としての役割もあります。これらの二語、すなわち、「んでぃち」又は「んち」と「やん」は複合語又は慣用句のように、常に一体となって、この意味を表わします。したがって、、存在動詞「やん」の否定が「あらん」であるのに対し、例文Aのように、否定は動詞側で行なわれ、この「んちやん」はそのままの形を維持します。「んちやん」の側を否定にすると、「飲むんでぃちえ、あらん」となりますが、意味は、「飲むつもりではない」または「飲むという事ではない」等となり、前者が「飲まない決意」を表わすのに対し、後者は「とりあえず」と「一時的な考え」を表わします。なお、「んち」は、例文@の()にあるように、「んでぃち」のつづまったものですが、口語においては、「んち」使いが多いと思われます。
【応用問題】次の文の太字部分を「んちやん(んでぃちやん)」を使う文に直しなさい。必要に応じて他の語も直しなさい。
@やあんや勉強心掛(びんちょうくくりが)きゆる積合(ちむええ)やんどお。
A父(すう)や家建(やあた)てぃらんでぃ、考(かんげ)えとおみせえんでぃさ。
B親(をぅや)ぬ家(やあ)ん、とぅん回(まあ)い回いさなんでぃ思(うむ)とおん。
C今(なま)から後(あと)お、しい破(や)んぜじえ、さん積合(ちむええ)そおん。
Dなあ、誰(たあ)ん、頼(たる)がきらん考(かんげ)えそおいびいさ。
答え:
@やあんや勉強心か掛きゆんちやんどお。
A父や家建てぃゆんちやみせえんでぃさ。
B親ぬ家やとぅん回い回いすんちやん。
C今から後お、しい破んじえ、さんちやん。
Dなあ、誰ん、頼がきらんちやいびいさ。
日本語意訳:
@来年は勉強を励むつもりだよ。
A父は家を建て替えるつもりだとさ。
B実家も、ときどき立寄ってみるつもりだ。
C今後は失敗はしないつもりだ。
Dもう、誰も頼らないつもりですよ。
【話題-沖縄語におけるマ行とナ行の混在】
なぜ、首里語では「読むん」が「読ぬん」となり、また「食まやびいん」等がなぜ、「食なびいん」となるのかという質問が多いです。読者の期待に副うような適切な答えになっているかどうかは読者が判断する事ですが、筆者は言語の習慣の違いからそうなっていると答えています。沖縄語には同地域でも古い語と新しい語が混在する他、地方間でも古音の多い地域と新音の多い地域があります(それが、語の変遷を知りえる環境になっています)。中でもマ行音とナ行音の混在は比較的多く、特に「みや」「まや」等が「な」に変形する例が多いです。「みふぇえでえびる」が「にふぇえでえびる」に変化したのは代表的な例です。
首里語以外→首里語
「飲むん」→「飲ぬん」(これは首里語のみ)
「飲まやびいん」→「飲なびいん」(首里語に影響された那覇語系地方語含む)
「飲まびいん」→「飲なびん」(上同)