沖縄タイムス「唐獅子」掲載 提供 有限会社 南謡出版
比嘉 清 ホームへ戻る  うちなあうち賛歌  
ハ行の縁  (掲載 2007.5.11)
日本語版 うちなあぐち版

 
 地域ごとに、ことばが異なるというのは、やはり、沖縄の特色かと思われる。うちなあぐちの話題ともなれば、競い合って話題にされる筆頭かも知れない。『沖縄語辞典』も、「琉球方言内部の差も本土方言内部の差に匹敵するほど大きい」と指摘するほどだ。

郷里の与勝では、首里系の字照間や字西原を除いて、首里・那覇系の用言におけるサ行音がハ行音に変わること(「ひいさん」など一部例外あり)はよく知られる。「すん」、「ちゅらさん」、「やしが」は、それぞれ、「ふん」、「ちゅらはん」、「やひが」となる。

郷里人や親戚兄弟同士では、日本語を使わない。「民族的ポリシー」などからではない。子どもころからの習慣を修正するのが照れくさいだけ。うちなあぐち仲間と電話でやりとりすることがある。発声直前に、舌先で「サ行音」に「翻訳」する。娘らが、「今日のうちなあぐちは変」と言う。耳は敏感だ。結婚前、家内の兄弟姉妹同士が日本語で会話していることにカルチャーショックを受けた。家内は本島語を聞けるが、彼女らの白保ことばは、大半は意味不明だ。「まあはんだら(おいしいでしょう?)」は、状況から分かった。「与那城と同じハ行だ」と、おかしがった。

ある日、旧三和村(糸満)出身の近所と話しているうちに、彼の形容詞の「〜さん」が意外にも、ハ行音であることに気付いた。「ひるまはぬや(珍しいね)」と、握手する。

むしろ、ハ行子音(P、F、h音)の分布の方が、カ行子音のそれとともに有名だ。前述のような品詞の種類による音の違いの分布はあまり聞かない。地元からすれば、大きな違いであるが、琉球方言の区分としては、中南部の方言群は、「沖縄南部方言」(『同書』)または那覇方言系に分類する。集落の移転や分離なども関係する。細かくいえばきりがないのだ。

沖縄の個性豊かな地域の多様性は、二百以上ある(時代的変遷はあるが)といわれるグスクの数にも象徴される。おそらく、琉球王府時代の統治姿勢の反映でもある。古代風のミニ豪族(按司)が狭いムラムラを抱え割拠する。搾取してナンボ。大地主や武士階級が台頭する余地がなかった。支配者(覇者)の目は、海外貿易に向いていた。琉球を襲った薩摩の主な狙いも貿易利益にあった。

注:字数等の関係で「唐獅子」と文言が違うところが若干あります。

 
 地域ぬかじ、くとぅばぬ違ゆんでぃしえ、何(ぬう)んでぃちん、沖縄ぬ特色がやらんでぃ思(うま)ありいん。うちなあぐちぬ話題(わでえ)とぅないねえ、一番やいがやすらんわからん。『沖縄語辞典』がん、「琉球方言内部の差も本土方言内部の差に匹敵するほど大きい」んでぃち指摘すぬあたいやん。

シィマぬ与勝んじえ、首里系ぬ字照間(てぃるま)んでえ字西原(にしばる)んでえくうとぅ、首里・那覇系ぬ用言うとおてぃぬサ行音がハ行音んかい変わゆるくとお(「ひいさん」んでえ一部例外あん)、ゆう知らっとをん。「すん」、「ちゅらさん」、「やしが」や、うぬうぬ、「ふん」、「ちゅらはん」、「やひが」とぅなゆん。

シィマん人(ちゅ)とぅか親戚(ゑえか)兄弟同士(ちょおでえどうさあ)やれえ、日本語お使(ちか)あらん。「民族的ポリシー」からあ、あらん。童(わらび)ぬばすからぬ習慣、改みゆるくとぅが恥かさるうっぴ。うちなあぐちゑえずうたあとぅ電話し話しすぬばすぬあん。声(くぃい)出じゃする前(めえ)なかい、舌先(しばさち)んじ「サ行音」んかい「翻訳」すん。娘(ゐなぐわらび)ちゃあが、「今日(ちゅう)ぬうちなあぐちえ違とをおん」んでぃち言ん。耳え分かとをるふうじ。結婚前(にいびちめえ)、妻(とぅじ)ぬ兄弟姉妹同士が日本語なかいゆんたくすぬくとぅにカルチャーショック受きたん。妻え本島語聞ちゆうすしが、彼女(く)ったあ白保(すさぶ)くとぅばあ、大概(てえげえ)や文字(むじ)んくじん分からん。「まあはんだら(おいしいでしょう?)」や、状況から分かたん。「与那城(ゆなぐしく)とぅ同(い、ゆ)ぬハ行やっさあ」んでぃち、うかささん。

ある日、旧三和村(糸満)出(んじ)ぬ隣(とぅな)いぬ人とぅ話そをるうちなかい、彼(うり)が形容詞ぬ「〜さん」が思いぬふか、ハ行音やるくとぅぬわかたん。「ひるまはぬや」んでぃち、握手さるばす。

けえてえ、ハ行子音(P、F、h音)ぬ分布がる、カ行子音ぬ分布とぅ共(とうむ)に知らっとをる。前述ねえそをる品詞ぬ種類ゆいぬ音(うとぅ)ぬ違いぬ分布やよねえ聞ちんだん。地元からしいねえ、大(ま)ぎさる違えやいやすしが、琉球方言ぬ区分とぅしちぇえ、中南部ぬ方言群や、「沖縄南部方言」(『同書』)また那覇方言系んかい分類さっとをん。集落ぬ移転とぅか分離んでえん関係すん。みいみいくじい言いねえ、ちゃっさきいあるばすやん。

沖縄ぬ個性豊かな地域ぬ多様性や、二百以上あぬ(時代的変遷ぬんあいやすしが)んでぃ言ゃっとをるグスクぬ数にん表りとをん。いいくる、琉球王府時代ぬ統治姿勢ぬ表りんやらはじ。古代風ぬミニ豪族(按司)が狭(いば)さるシィマジィマムラムラかげえてぃ割拠そをたん。搾取しちゃっさあ。大地主んでえ武士階級ぬ台頭すぬまどおねえらんたん。支配者(覇者)ぬ目(みい)や、海外貿易んかいどぅ向(ん)かとをたる。琉球攻みたる薩摩ぬ主な思内(うみうち)ん貿易利益んかいどぅあたる。

注:字数等ぬ関係なかい「唐獅子」とぅ文言ぬ違ゆるとぅくるぬくうてん小あいびいん。