比嘉 清:作
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平成273

見い知らん従姉U

 

「いぇえあんし」

 四郎(しらあ)や、「()ぎい(すう)」んでぃぬ徒名(あざなあ)や、(なあ)(ぐしく)史春ぬ村会(すんくぁい)議員(じいん)そおたる(くとぅ)んあてぃ、与勝(かっちん)半島(ゆなぐしく)(ちゅ)(ちゃあ)やれえ、いいくる()っちょおいびいたしが、(とぅう)(はな)りとおる具志川(ぐしちゃあ)まんぐら(までぃ)()かりとおたんでえ(うむ)やびらんたん。

麻里子や、四郎(しらあ)がふぃるまさそおる(ちら)うちきそおいびいたくとぅ、目笑(みいわれ)えどぅさびたる。

「あんせえ、()ぎい(すう)や、我男(わあゐきが)(をぅや)どぅやみせえるむんぬ」

 四郎(しらあ)や、うり()ち、肝内(ちむうち)()え、(うふ)どぅん()おいさびたしが、首横(くびよお)がち、(ちゅ)けのお、(まどぅ)(ふか)んかい目向(みいん)きてぃから、麻里子ぬ(ちら)、しょう()さびたん。

ちゅてえや、(ぬう)んでぃちが、()()むらあん()かやびらんたん。あんしいねえ、宮城(なあぐしく)史春叔父(をぅざ)さあや、ゆうべえ[1](をぅ)いがさびいたら。あらんでえ、ただ、肝浅(ちむあさ)さどぅあいびいたがやあ。うんな(くと)お、四郎(しらあ)(たあ)からん(ぬう)()ちゃる(くと)お、()えやびらんたん。

 四郎(しらあ)や、ふぃるましん、(ぬう)がやら、いふぃえ、(ちむ)何処(まあ)がなんかい(さび)っさ(うみ)いぬあんねえ、(うむ)やびたん。やしが、(ぬう)(さび)っさする(わき)()えん(はじ)やいびいたん。

如何(いか)(ぬう)やらわん、「あんせえ、麻里子さん、うんじゅお、()ぎい(すう)ゆうべえぬ(くぁ)どぅやるい」んでぃち、()ちゅる(くとぅ)んないやびらん。

(なげ)えさ、とぅるばとおちいねえ、異風(いふう)なあやいびいたくとぅ、四郎(しらあ)や、(ぬう)がな()(くとぅ)にさびたん。

「…いぇえいぇえ、あんしいねえよお、うんじゅお、()ぎい(すう)(くぁ)宮城(なあぐしく)史春ぬ(ゐなぐ)(ぐぁ)どぅなとおるい」

 (ぬう)ん、()ちらし(けえ)さあさあに、(たし)かみらんてぃん、()むるむんぬんでぃん、(うむ)やびたしが、()じゃち(あとぅ)から、(また)とぅ()みやないびたん。

「んん、あんなとおるばあてえ」

「あんしいねえ、(わん)とお、従姉(いちゅく)同士(どうさあ)どぅなとおせえ」

「んん、あんやるばあてえ」

 ()ちゃい(はん)ちゃいするうちにん、四郎(しらあ)(また)(いる)んな(くとぅ)(かんげ)えやびたん。

「あっさばよお…。(ぬう)やふぃるまさが」

 四郎や、いいくる、自一人物(どぅうちゅいむに)()いぬ()(ええ)どぅやいびいたる。

「あいなあ、四郎主(しらあすう)ん、()からんどぅあたるばあなあ」

(たあ)からん()ちん、んだんたっさあ」

 四郎(しらあ)達金城(たあかなぐしく)(やあq)ぬ、宮城(なあぐしく)(やあ)とぅ(ふぃざ)()ちゅんねえなてぃからあ上辺(うゎあび)びれえびけんけえなやあに、()ばがい(かあぎ)()しゆる(くとぅ)ん、いきらくけえなてぃどぅ(をぅ)たんでぃち、(はなしい)さんてえまん、麻里子や、ただ、ふぃるまさするうっぴがやたらん()かやびらんたん。

「んちゃ、()ぎい(すう)や、()達母(たああんまあ)退()ちからあ、なあ、()達母(たああんまあ)(はなしい)やさんなとおんでぃる()ちょおくとぅやあ、うんじゅが、()からんてぃん、うりん仕方(しかた)()えらんさ」

あん()ちゃる麻里子やしが、彼女(うり)(うしる)お、いふぃえ、(さび)っさぎさそおいびいたん。

「あらぬよお、()ぎい(すう)やよお、(いくさ)ぬばすんじ、(どぅう)(とぅじ)ぬウタぬ、けえ()あちゃんでぃ、(かん)(ちげ)えそおびいたるばあてえ。あんさあに、(わあ)母傍(あんまあはた)んかい、()ういが()ょおたんでぃよお」

 麻里子ぬ(ばなしい)()いねえ、戦後(いくさあとぅ)南洋(なんよう)戦場(いくさば)から(むどぅ)てぃ()宮城(なあぐしく)史春お、(どぅう)(とぅじ)ぬウタぬ米軍(アミリカーたあ)(しゅう)(ゆう)()んかい()りらっとおる(くとぅ)()からな、(いくさ)ぬばすんじ、けえ()ちゃんでぃ(うむ)やあに、戦前(いくさめえ)ぬなあふぃん、(わか)さたる時分(じぶん)に、一時(いっとちゃ)あ、(にんぐ)るうなとおたる麻里子ぬ(あんまあ)、「(とぅじ)」にさんでぃぬ(とぅ)やいびいたん。

 (いくさ)ぬばすぬ(くとぅ)やれえ、んちゃ、うんな事んあら(はじ)んでぃ、四郎(しらあ)(うむ)やびたん。

「やしが、我母(わあんまあ)ぬ、(わん)とぅ、なあ一人(ちゅい)子産(くぁな)ちからどぅやたんどおやあ、()ぎい(すう)(むとぅ「)(とぅじ)ぬウタぬ()ちょおる(くとぅ)()かてぃ彼女(あり)(はた)んかい、(むどぅ)てぃ()じゃ()え。うぬウタん、()十年前(じゅうにんめえ)んじ、(をぅ)らんなとおる(くと)お、うんじゅん、()っちょおる(とぅう)いやさ」

「…」

()ぎい(すう)んかい如何(ちゃ)(よう)事情(じじょう)ぬあらわん、()達母(たああんまあ)や、やすんじてぃん、やすんじららな、()ちどぅ、()らちょおたしが、()(うみ)(ぐぁ)ん、二人(たい)(をぅ)何時(いち)(までぃ)ん、ゐいるう()ちいさあに、じゃあまてぃいまし、(をぅ)(くとぅ)んならんたるばあてえ」

 四郎(しらあ)や、言葉(くとぅば)(けえ)(みち)()かやびらんたん。

「いいばす、(せえゑえ)えな(くとぅ)に、()(たあ)や、(ゐなぐ)姉妹(ちょおでえ)びけんどぅやたくとぅ、宮城(なあぐしく)(やあ)()じゅみ、()がに、んでぃぬ問答(むんどう)や、さんてぃん()むたん。やしがよお、()(たあ)あんまあがる(ちむ)(ぐる)しいむんやんてえ、(ゐなぐ)(ぐぁ)二人(たい)()ちぇえる女身(ゐなぐみ)どぅやせえやあ、なあ(とぅじ)さあん(をぅ)らな、(じん)じいらん()っち、ちゅてえや、バーんじ(はたら)ちょおたしが、親戚(ゑえか)(ちゃあ)(どぅし)(ちゃあ)(むる)なかい、びっすうさったる(たみ)なかい、むとぅうしいゆさな、うぬ(あとぅ)からあ、(あわ)りぬだんだんそおたるばあてえ」

うんな事迄(くとぅまで)(かた)らんてぃん()みいるするんでぃ、四郎(しらあ)(うみ)とおいびいたしが、なあ麻里子ぬ物語(むぬがたい)や、()しまりやびらんたん。

「うぬうちなかい、(ゐきが)()おいが()ゅうんねえ、なたんよお。見知(みいし)らん(ゐきが)どぅやたしが、()(たあ)姉妹(ちょうでえ)んかい、ぐま使(じけ)(ぐぁあ)(とぅ)らちゃいすたくとぅ、(じん)()ちえ、やたる(はじ)()ぬん、だあ、銭飢(じんう)がりどぅそおたくとぅ、(じん)()いらさりいねえ、でえじな、いしょうさたんよお。やしが、妹小(うっとっぅうぐぁあ)や、うぬ(ゐきが)、でえじな、はごうさそおたんよお。(くう)いにいから、(あんまあ)()うやあやたしが、丁度(ちょうどぅ)(ゐきが)(みぐ)てぃ()ゅんねえしなたる時分(じぶん)や、なあだ小学(しょうがく)(いち)年生(にんしい)どぅないたしが、あっぱんがれえすんねえし、なてぃ()ゃるばあてえ」

「…」

「やしが、いぇえ、四郎主(しらあすう)、とお、()(とぅ)らしよお。ある(ふぃい)安慶名(あぎなあ)(まち)んかい、()ぎい(すう)ぬ、()おい(むん)しいが、(もう)ちょおたるむぬやしが、ひょうしなむん、うぬばす、()達母(たああんまあ)とぅ、はい()()たるばあ。あっせ、うりからどぅ、()達母(たああんまあ)ん、()ぎい(すう)ん、けえ(ちが)たる(はじ)どお。又ん、(こんぐ)るけえなたるばあてえ。あぬ金持(じんむ)ちぬ(ゐきが)とぅ(あか)りやあによお。あんし、(どぅう)(やし)く、男替(ゐきが)えらりいるむんがやら…。うりからどぅやんどお、ゆくん、宮城(なあぐしく)(やあ)から、でえじな、くしさりいんねえしなた()え。」

うぬば()お、麻里子ぬ(あんまあ)宮城(なあぐしく)(やあ)からくしさっとおんでぃぬ(はなしい)や、麻里子ぬ(どぅう)一人(ちゅい)(かんげ)えどぅやるんでぃ(うむ)てぃ、四郎(しらあ)や、色分(いるわ)きてぃ、(ちむ)()きやびらんたん。

(ぬう)んでぃちが、()()むらあ()からんたる()(らあ)や、(とぅ)(くぐ)にてぃ、()ちゅる(くと)おさびらんたん。

「あんし、うんじゅが(あんまあ)や、かなっとおみせえんなあ」

「んん、(なま)ん、頑丈(がんじゅう)やんどお。なあ、(とぅし)やしがてえ」

(いゃあ)がる見考(みいかんげ)えそおるばあ?」

「んん。やしが、(なま)頑丈(がんじゅう)やくとぅ、(ぬう)んくぃん、(どぅう)しどぅすんどお。(やんめえ)()()だんどぅあくとぅ、(わん)ねえ、(あんまあ)頓着(とんぢゃく)らあさる(くとぅ)()()だんむん」

「あんせえ、上等(じょうとう)やさ」

本当(ふんとう)やれえ、(あんまあ)ん、明日(あちゃ)荼毘(だび)んかい、()()しゃそおたしが、だあ、色々(いるいる)あてぃ、()からんせえ」

「あんでぃちぇえ、()えらんさに、うんなばあびけんや、宮城(なあぐしく)(やあ)ん、やすんじてぃ(とぅ)らすぬ(はじ)やしがやあ」

「やてぃん、(あんまあ)や、()かん(かんげ)えどぅそおるむんぬ…」

「やん?」

「いぇえ、んちゃよお、()達母(たあんまあ)ん、四郎(しらあ)(すう)(くと)お、()う、()っちょおんどお」

 麻里子や、ちゅうちゃん、(はなしい)()えやびたん。

「へえ、(ぬう)んでぃち?、()ねえ、()らなそおてぃ」

「あい、()(たあ)(あんまあ)ん、()達母事(たああんまあくと)お、()()っちょおる(はじ)どお。我っ達母(たああんまあ)(なあ)真鶴(まじるう)んでぃ()くとぅ、()っ達母んかい、()ちんでえ」

「だあ、()達母(たああんまあ)ん、()(ゑえだ)、けえ(まあ)あちょおくとぅよお」

「あい、やたんなあ。()からんたん」

四十九(しんじゅうくにち)日にん、くぬ(めえ)どぅ、うちなちょおんどお。()達母(たああんまあ)からあ、()達話(たあはなしい)()ちぇえ()だんたっさあ」

 四郎(しらあ)顔振(かあぶ)いし()しやびたん。

()[2]ろうが、中学生(ちゅうがくしい)やたるぬばす、西原(にしばら)村芝(むらしば)()んかいや、()ねえ、(あんまあ)とぅまじゅん、やたせえ」

「やたんなあ、()からんたっさあ」

「あんまあが、うんじゅ()ちよお、『あり、あぬ(ゐきが)(わらび)汝従弟(いゃあいちゅく)なとおくとぅ、()()ちょおけえ』んでぃ()たんどお」

「へえ、やたんなあ」

 四郎(しらあ)や「だあ、あんせえ、(わん)ねえ、うんにいや、うんじゅびけんどぅ()ちょおたくとぅ」んでえ、()たい(めえ)(くとぅ)()やりやびいみ。

 (ぬう)(むる)()らんでぃ、()しん、また、異風(いふう)なあやいやすたしが、()っちょおん(ふる)うなあすしやかやましやんでぃ(うむ)やびたん。やしが、麻里子や、うんな(くと)お、(ぬう)ん、(ちむ)()きてえ(をぅ)らんぎさいびいたん。

「やしが、(わん)ねえ、今日(ちゅう)や、うんじゅとぅ(むぬ)語合(がたええ)ぬなてぃ、でえじな、(ちむ)ふぃじ、いしょうさぬならんさ」

()ぬん、行会(いちゃ)てぃん()だん従姉(いちゅく)(をぅ)んでえ、(うま)あんたっさあ」

()達母(たああんまあ)ん、だあ、親戚(ゑえか)んでぃちん、なんぞお(をぅ)らんくとぅ、(わん)ねえ、でえじな、親戚(ゑえか)()がりどぅそおたる」

麻里子ぬ、「親戚飢がり」んでぃぬ物言(むぬい)(よう)面白(うむ)さぬ、四郎(しらあ)や、()ぬばす、(はじ)みてぃ(うび)らじに、(たか)(われ)え、けえさびたん。

 あんされえ、(さび)っさる(うみ)いん、まあがなんかい、ふぃっ(とぅ)でぃ()ちゃびたん。うぬ拍子(ひょうし)なかい四郎(しらあ)(うむ)やびたん。

(ちむ)何処(まあ)がなんかい、麻里子が(くとぅ)(うむ)とおたる(はじ)やいびいたん。やしが、親戚(ゑえか)同士(どぅうしゃあ)とぅしち、(むぬ)(がた)(ええ)そおるうちなかい、ふぃるましむん、恋心(くいぐくる)()っちょおたる(ちむ)()てぃ()しん、うっ()っでぃ()()えらんなとおいびいたん。

 うぬ(くとぅ)くるん、(かんげ)(よう)にゆてえ、また、(さび)しいむぬんやいびいたしが…。

 うぬうちなかい、麻里子ぬ安慶名(あぎな)(やあ)(ちか)くぬ大道(うふみち)迄来(までぃち)ゃあびたん。

「とお、くまりかあやさ」

 麻里子ぬ合図(いぇえじ)し、四郎(しらあ)車停(くるまとぅ)みやびたん。

とおなあ、くりし、麻里子ぬぜえりふぇえりから、(ぬが)あらりがすらんでぃ、(うみ)いねえ、四郎(しらあ)や、片心許(かたくくる)さびたん。うぬば()お、車停(くるまとぅ)みいや、かたくじら、麻里子ぬゆんたくお、ちゅてえや、あった(とぅ)るでぃさびたん。

うぬばす、四郎(しらあ)(うむ)やびたん。今日(ちゅう)(ぐとぅ)し、(ゐなぐ)ぬぜえりふぇえり()ちゅ()え、(なあ)(ぐとぅ)やいびいたん。ぜえりふぇえりんでぃ()いねえ、麻里子んかい、無礼(ぶりい)がないびいらあ。

麻里子や(くるま)ぬドア()きやあに、助手席(ずすしち)から()りやびたん。

今日(ちゅう)や、なあ、()ぎい(すう)ん、いしょうさしんそおちょおさ」

今先(なまさち)、「我男(わあゐきが)(うや)」んでぃ()ちょおたるむぬ、くぬ「()ぎい(すう)」んでぃ()物言(むに)(よう)や、いふぃえ、他人(たにん)風儀(ふうじい)()かりやびたん。四郎(しらあ)(かんげ)()じがやいびいたら。

「とお、あんせえ、汝子(いゃあくぁ)(ちゃあ)ん、()ちかかんてぃいし(をぅ)(はじ)やるむんぬ」

 四郎(しらあ)ぬ、あん、けえ()ちゃる拍子(ひょうし)なかい、麻里子や、またん、(くち)ぱあくう、しいぎさあなやびたん。

(わん)ねえ、(くぁ)あ、(をぅ)らんどお」

「あい、やんなあ?」

(なま)あ、(あんまあ)とぅ二人(たい)どぅ(をぅ)る」

「あんし、(うっと)お?」

(うとぅ)()ち、(ない)()んかいどぅ(をぅ)んどお」

「やんなあ、あんせえ、()達母(たああんまあ)とぅ、(うっとぅ)んかいん、沙汰(さた)(とぅ)らしよお」

(かた)とおちゅさ。(ちけ)えち(とぅ)らち、にいふぇえどお」

 麻里子ぬ手振(てぃいふ)とおし、()じゃがちいなあ、四郎(しらあ)や、肝内(ちむうち)んじえ、()ちがちし、(じゅん)ねえ、よおんなあ、アクセル、()だみやびらん。

「あんせえ、(また)明日(あちゃ)やあ」

やしが、なあ明日(あっちゃ)葬式(そうしち)ぬばすん、四十(しんじゅう)九日(くにち)(までぃ)(なんか)七日(なんk)(をぅ)とおてぃん、四郎(しらあ)や麻里子とぅ(また)とぅ話物語(はなしむぬがたい)する(くと)()えやびらんたん。葬式(そうしち)ぬばあや()ちん、いやでぃん、七日(なんか)七日(なんか)ぬばすお、()ちえ(ちじ)えがそおたら()かやびたん。やしが、四郎(しらあ)や、なあ、(ちむ)()きやびらんたん。ただ、()(なか)んかいや、(じゅん)に、ふぃるましい(くとぅ)ぬあるむんやんでぃち、ちくじく、(うむ)やびたん。

 ()ぬなあ明日(あっちゃ)あ、四郎(しらあ)(とぅじ)とぅまじゅん、ちがきてぃ、白明(しるあ)かがいぬうるみに()きやあに、宮城(なあぐしく)史春ぬ荼毘(だび)んかい()ちゅる()こういむこういさびたん。

()(すう)、あんし気早(ちいべえ)さる。(くぁ)(ちゃあ)学校(がっこう)んかい()らちからどぅ、あまんかいや、()かりいるむんぬ」

「んちゃ、あんやたっさあ」

 四郎(しらあ)(てぃい)かみやがなあ、()(わき)さびたん。

 (とぅじ)ぬ智子ぬ、(くぁ)(ちゃあ)学校(がっこう)んかい(うく)てぃからぬ(むどぅ)いや、いっそうまやかん、にっかけえなとおいびいたん。

今日(ちゅう)ぬ出棺ぬんかいや、かき()あしゆさん(くと)お、昨日(ちぬう)ぬうちなかい、宮城(なあぐしく)ぬ米子んかい()ちぇえたるむんぬ、四郎(しらあ)や、(ぬう)んでぃちが、()しがちのおりそおたらあ()かやびらんたん。

(あとぅ)ぬうんじゅみ、(やあ)から()じた()え、()()まんぐるどぅやいびいたる。

六十(るくじゅ)()まんぐる(まで)え、村会(すんくぁい)議員(じいん)ぬんそおたくとぅ、いちゃっさぬ(ちゅ)荼毘(だび)がやらんでぃ、四郎(しらあ)や、(うむ)とおたしが、宮城史春ぬ葬式(そうしち)え、(なみ)どぅやいびいたる。

麻里子や、葬式(そうしち)(ざあ)()え、親戚(ゑえか)(ざあ)んかいや、(をぅ)いびらんたん。

うりん、仕方(しかた)()えらん(くとぅ)やんでぃ(うむ)やがなあ、四郎(しらあ)()お、(どぅう)兄弟(ちょお)姉妹(でえ)(ちゃあ)んまじゅん、親戚席(ゑえかざあ)んかい()っちょおいびいたん。(ちむ)(ふぃま)四郎(しらあ)や、手押合(てぃいう)さあ(たあ)一人(ちゅい)なあ一人なあ、(なが)がみやびたん。

きっさ、麻里子ぬ(くと)お、けえ(わし)りとおたるむぬ、うぬうち、手押合(てぅいう)さあぬ一人(ちゅい)とぅしち、麻里子ぬ、姿見(しがたみ)しやびたん。

(また)とぅ()う、()じいねえ、いっぺえぬ(ちゅ)(かあぎい)やんでぃ、ちくじく、(うむ)やびたん。四郎(しらあ)や、彼女(あり)手押合(てぃいう)さあちょおる手様足(てぃいようふぃさ)(よう)、ちゃあ、()じいそおいびいたん。やしが、麻里子や、四郎(しらあ)(はた)あむさっとぅ、()だんでぃんさびらんたん。

四郎(しらあ)や、うりん()むんでぃ(うむ)やびたん。むしか、彼女(あり)(みい)四郎(しらあ)んかい()かあさりいねえ、四郎(しらあ)ん、(みい)様口(ようくち)(よう)し、(いれ)えらんでえならんたくとぅやいびいん。

葬式(そうしち)()わたれえ、四郎(しらあ)大兄(うふやっちい)夫婦(みいとぅんだ)びけんや、金城(かなぐしく)(やあ)(むる)兄弟(ちょう)姉妹(でえ)()わいとぅしち、宮城(なあぐしく)(やあ)(まで)え、(みぐ)てぃ()かんとおならんでぃぬ(くとぅ)やいびいたん。

葬式後(そうしちあとぅ)位牌(いふぇえ)()ちゃあぬ(やあ)んかい、近親戚(ちかゑえか)()ちゅる(なれ)えや、(やあ)んじそおたる(んかし)からぬ葬式(そうしち)ぬしい(よう)名残(なぐ)いやいびいたん。

戦後(いくさあとぅ)十幾年(じゅういくにん)びけん()りてぃからあ沖縄人(うちなあんちゅ)ん、葬式(そうしち)会場(くぁいじょう)んじするあたい、いふぇえ、ゆちみ()っちゅんねえなとおるしいじやいびいたん。

()(てえ)、なあ(やあ)とぅめえてぃん()むんどお」

んでぃ、(うづやっちい)太郎(たらあ)四郎(しらあ)んかい()やびたん。

「あんしん、()むがやあ」

「へえ、だあ、あまぬ(やあ)や、(いい)ばさんあい、(むる)()ちいねえ、(けえ)てえ、あま(かた)ん、御取持(うとぅいむ)ちいやしいかんてぃいする(はじ)どお」

「あんやてぃから、とおあんせえ」

四郎(しらあ)大兄(うふやっちい)夫婦(みいとぅんだ)とぅ(わか)やあに、臨時(あった)(くるま)車場(うちづどぅくる)んかい()からんでぃさびたん。

()臨時(あった)駐車場(くるまうちどぅくる)お、四郎(しらあ)(わらび)やるばす(まで)え、()ぶっくぁどぅやたしが、(なま)あ、(たあ)面影(うみかじ)え、むさっとぅ、()えらな、さぼうりてぃ、(もう)どぅけえなとおいびいたる。(たあ)やたる(とぅくる)側傍(すばふぃら)んかいあたるちゃっさきいぬ(ちゅ)(まあち)え、いっそうから()()てぃらってぃ、コンクリートとぅアスファルトなかい(つく)らっとおる「(ちゅ)ら」大道(うふみち)んかい、けえなとおびいたん。

四郎(しらあ)や、()ぬうち()わとおる景色(ちいち)()ち、(うふ)(いいち)()ちょおいびいたん。うぬばす、(くさあ)から(あばあ)ぬ陽子(くぃい)ぬさびたん。

「いぇえ、四郎(しらあ)()(たあ)(かっちん)(ゆなぐしく)んかいや、まるけえてぃなあどぅ()ゅうるむんぬ、でぃか、()(たあ)んかい、()ばがてぃ()だん?」

あん()らりいねえ、(んぱ)あないびらんたん。

「あんせえ、わざわざやるむんぬ、()ちいどぅする」

 (とぅじ)ぬ智子ん、いしょうさそおる風儀(ふうじ)やいびいたん。

陽子ぬ(すば)んかいや、(うとぅ)森根(むんにい)(すう)()っちょおいびいたん。「んちゃ、やさ」でぃ、四郎(しらあ)(うむ)やびたん。靖ぬ(をぅや)ん、(なあ)城主(ぐしくすう)とぅ()西原人(にしばらんちゅ)やたくとぅ、()ぎい(すう)(くと)お、()()っちょおる(はじ)やいびいたん。

 靖ん、四郎(しらあ)夫婦(みいとぅんだ)ぬ、(どぅう)(やあ)んかい()ゆる(くとぅ)ぬいしょうさがあたらあ、(われ)えかんてぃい(ぐぁあ)さそおいびいたん。(うり)え、陽子(とぅじ)にさあに、家立(やあた)っちからあ、あまくまぬアパートんかい家移(やあうち)いびけえそおいびいたしが、(なま)あ、(とぅじ)()まり故郷(ジマ)やる与那城(ゆなぐしく)んかい居付(いいち)ちょおいびたん。

陽子(あばあ)(なま)宿元(やどぅむとぅ)お、(んかし)え、(んま)()らしやたる(とぅくる)やしが、戦後(いくさあと)お、ふぃるまさ、うち()わてぃ()ゃる行成(いちない)ぬあいびいん。

戦前(いくさめえ)や、(んま)()らしやたるあたいぬ(とう)(ばる)やたる(たみ)なかい、戦後(いくさあとぅ)一時(いっとうちゃ)あ、中国軍(ちゅうぐくぐん)なかい(とぅ)らってぃ、シマぬ(ちゅ)(ちゃあ)ぬ「()()陣地(じんち)」でぃ(いん)ちょおる基地(ちち)とぅなとおいびいたん。

中国軍や、()(ぐに)とぅしち、沖縄(うちなあ)んかい()ょおたる風儀(ふうじ)やいびいしが、うぬ用向(うむむ)ちえ、(ぬう)がやたら、しかっとお、()かてえ(をぅ)らん(ふう)()やいびいん。やしが、シマぬ(ちゅ)(ちゃあ)や、いやでぃん、(いくさ)道具(どうぐ)そうな(むん)とぅか砲弾(びゃあ)でえぬ片付(かたじ)きかちする(たみ)えあらにんでぃ、沙汰(さた)さおいびいたん。

()がんでえ、()(たあ)や、中国内(ちゅうごくうち)(をぅ)とおてぃ、内戦(うちいくさ)(はじ)またる(たみ)なかい、(ふぃ)ちなてぃ()じゃるむぬやいびいしが、うぬ(あとぅ)んかいや、ちゃっさきいぬ軍鉄物(いくさかにむん)(ぬく)さっとおいびいたくとぅやいびいん。

まんぐらぬ(ちゅ)(ちゃあ)かたくじら、与勝(かっちん)半島(ゆなぐしく)(じゅう)から、うぬ鉄物(かにむん)(ふぃる)ゆんでぃち、(くぇえ)から、ツルハシそうなむん(までぅ)、ふぃ()ぎてぃ()ゃあに、地突付(ぢいちち)ちょおいびいたん。(はた)から()じいねえ、(ぬう)がなぬ大普請(うふぶしん)やてぃん、そおる(ぐとぅ)おいびいたん。やしが、砲弾(ふうだ)ぬんあたくとぅ、うりぬ爆発(ばくふぁち)する(んじゃ)(ぐとぅ)ん、あいびいたん。うぬ(ゆい)(わらび)一人(ちゅい)ぬけえ()ちゃる(くとぅ)んあいびいたん。

いいくる、(ゆう)さんでぃ(めえ)ないねえ、古鉄(ふるがに)()おやあぬ馬車(ばしゃ)()ゃあに、(ちゅ)(ちゃあ)(ふぃる)(あち)みてえる古鉄買(ふrがにこ)おてぃ、()ちゃびたん。

うぬうちなかい、古鉄(ふるがに)え、(くじくぎ)一本(いっぽ)ぬんちょおん、(ぬく)あらんあたい、みいみいてえ、いっそうから、(あさ)らってぃ、()えらんなとおいびいたん。

四郎(しらあ)ん、なあだ(わらび)どぅやいびいたしが、古鉄(ふるがに)()たる(じん)し、まるけえてぃ、映画(いいが)[3]()じいが()ちゅる(くとぅ)んないびたん。

古鉄(ふrがに)()えらんなたる支那(しな)陣地(じんち)(あと)お、まんぐらぬ(わらび)(ちゃあ)(あし)(どぅくる)とぅなとおいびいたしが、沖縄(うちなあ)(ゆた)なてぃちゃるまん(ぐる)からあ、(やあ)()てぃらりいんでえなやあに、(なま)あ、()ばやあしいちぇえ[4]そおる(とぅくる)んかいけえなといびいん。

此処(くま)(じゅん)にぬ番地(ばんち)え、(めえ)勝連町(かっちん)()()()どぅやいびいたしが、与那城(ゆなぐしく)んかいたっくぁあとおる(くとぅ)()てぃ、陽子(あばあ)(たあ)住所(しめえじゅ)()那城(なぐしく)んでぃち、(とぅう)とおびいたん。

(くぁ)(ちゃあ)校区(こうく)与那城(よなぐしく)小学校(しょうがっこう)んかいなとおびいたん。自治会(じちくぁい)字与那城(あざよなしろ)んかいどぅ()っちょおいびいたる。

(あざ)(さあけえ)や、行政区(じょうしいく)(さあけえ)やあらな、んまんかい(をぅ)(ちゅ)(ちゃあ)(かんげ)えとぅか、(ぬず)みさあに、(ちわ)まとおびいたん。

又、与那城(よなぐしく)やてぃん、金武湾(ちんまがい)(むてぃい)()()(ぐしく)地番(ちば)のおやいびいたしが、照間人(てぃるまんちゅ)()どおいびいたくとぅ、照間(てぃるま)ぬむん風儀(ふうじい)なとおびいたん。又、()金武湾(ちんまがい)なありいぬ(あがり)(むてぃい)(とぅくま)屋慶(やきな)名人(んちゅ)()どおいびいやたくとぅ、屋慶(やき)()領土(しま)風儀(ふうじい)なとおいびいたん。(じゅん)にぬ与那城(ゆなぐしく)お、海前(うみめえ)なちょおるシマやるむんぬ、うん(ぐとぅ)うし、海端(うみばた)(むる)余所(ゆす)ムラなかい(とぅ)らっとおる風儀(ふうじい)なやあに、(うみ)()えん、陸内(あぎうち)ぬシマ風儀(ふうじい)なとおいびいたん。

(じゅん)にぬ住所(しめえじゅ)お、勝連(かっちん)平安名(ひんな)どぅやるむぬ、()那城(なぐしく)地盤(くさてぃ)とぅそおる市会(しくぁい)議員(じいん)ぬん県会(きんくぁい)議員(じいん)ぬん(をぅ)いびいたん。

やしが、()りにちいてえ、まあぬシマん、(たげ)えに、じいぐいひゃあぐい、ごうぐちえさん、(なり)いなとおびいたん。

ようい、ちゅてえ(ぐぁあ)しいねえ、(あばあ)(やあ)んかい、うち()ちゃびたん。

「はいさい、()しりやびら」

 四郎(しらあ)や、玄関(じんくぁん)舞戸(めえじゅ)(すば)んかいあたる()(りん)()すやびたん。(やあ)(なあか)からピンポンでぃぬ(うとぅ)()かりやびたん。

「あげ、さっていむさってぃむ、(やあ)(なあか)んかいや(たあ)(をぅ)ならそおてぃ、()び鈴()らちゃい、挨拶(いぇえさち)さいすんちんあんな。(ぬう)ぬてえふぁやくとぅ?」

 陽子や、片口(かたくち)(われ)えさびたん。

「あらん、()()え、うりん礼儀(りいじ)どぅやる。(なあか)んかいや、(たあ)(をぅ)らんてぃん、()達家(たあやあ)くるんかい、合図(いぇえじ)そおるばすどぅやんどお」

「あっさ、あんし異風(いふう)物言(むに)いやる」

 てえふぁさがなあん、四郎(しらあ)(びち)(くとぅ)(うむ)やびたん。

 (やあ)(なあか)んかい、()いねえ、陽子や、(ちゃあき)台所(しむ)んかい()かやびたん。

「だあ、()(てええ)、コーヒーし、()むん?」

 ()やがちい、陽子や台所(しむ)水棚(みんたな)(めえ)んじ、御客(うちゃく)(はた)、とぅん(けえ)えやびたん。

「おお、コーヒーどぅましやる」

(てぃ)ねえすしんあん?」

 智子ん、ソファーから、()ったんでぃさびたん。

()むさ、智子、()ちょおけえ。()こうゆ()え、たでえまなかいないさ」

 近親戚(ちかゑえか)ぬばあや、御客(うちゃく)お、いいくる、一番座(いちばんざあ)畳座(たたんざあ)やあらな、三番座(さんばんざあ)んかい()かっとおる物食(むぬか)まあテーブルぬ椅子(いい)んかい()しらりやびたん。

陽子(うとぅ)ぬ靖ん西原人(にしばらんちゅ)やたくとぅ、()ぎい(すう)とぅ麻里子とぅぬ間柄(まがら)(くとぅ)ん、(ゆう)うしいねえ、()っちょおる(はじ)やんでぃち、四郎(しらあ)(うむ)とおいびいたん。

やしが、四郎(しらあ)や靖婿兄(むくちょうでえ)から()ぎい(すう)とぅ麻里子ぬ(くとぅ)(ふか)にん、なあふぃん、(いる)んな(くとぅ)()かさりいる(くとぅ)んかいなゆんでえ、うぬば()お、思寄(うみゆ)ゆやびらんたん。

()ら!、麻里子んでえ、()ちゃる(うび)いやあしが、()(たあ)がん、よねえ、()からんさあ。コザんかい(うとぅ)()っち()じゃんでぃぬ沙汰(さた)(まで)え、()ちょおしがよお…。()が、実人(じんてぃい)ぬ、()(むどぅ)たんでぃ()ちょおたるばあなあ」

 湯蒸(ゆうふ)かすんでぃち、水棚(みんたな)(めえ)んかい()っちょおたる陽子や、四郎(しらあ)(かた)たる(くとぅ)んかい、あんし、(いれ)えやびたん。

「あらぬ、ただ、麻里子や(なま)あ、(どぅう)(あんまあ)とぅ二人(たい)()らちょおんでぃぬ(はなしい)やたくとぅどぅ、あねえあらんがやあんでぃ()ちょおるうっぴどぅやる」

 四郎(しらあ)や、だてん、()らんでえ、(なま)ねえし、(かん)(ちげ)えさりゆんでぃ(うむ)やあに、()(のお)さびたん

「やしが、()ぎい(すう)(とぅ)てえ、けえ()あちから、(ゐなぐ)とぅか(くぁ)(くとぅ)なかい、沙汰(ざた)さりいんでえ、(うみ)ちゃきん()えん(くとぅ)やっさあやあ…」

 四郎(しらあ)とぅ陽子ぬ問答(むんどう)()ち、義理(やっ)(ちい)ん、(ぬう)がな、()らんでえならんでぃ、(うむ)とおる面目(ちらみい)(くち)そおいびいたん。

「いぇえ、()ぎい(すう)やよお、戦後(いくさあとぅ)()十年前(じゅにんめえ)んじけえ()あちゃる(とぅじ)ぬウタぬ()ちちょおんでぃ、()かてぃからあ、ウタぬ(はた)んかい(むどぅ)てぃ()ゃるうっさどぅやんどお」

汝身(いゃあみ)があ、(むどぅ)てぃ()ゃるうっぴんでぃ()しが、(ゐなぐ)(とぅ)てえ、うりやかぬ(あわ)(なち)かさる(くと)()えらんどおやあ」

水棚(みんたな)(めえ)なちょおる陽子や靖ぬ(はなしい)んかい耳平(みみふぃる)みとおる風儀(ふうじ)なやあに、(ちゃあき)言葉(くとぅば)(けえ)さびたん。

「やひが[5]よお」

 靖や、いっそう()や、陽子んかい()あち、与那城物(ゆなぐしくむ)(にい)いどぅさびいしが、西原人(にしばらんちゅ)やる(どぅう)(うっとぅ)(ちゃあ)とぅ(はなしい)するばあや、西原(にしばら)()()[6]どぅすしが、(ゐなぐ)(うや)平安(ふぃん)名人(なんちゅ)やくとぅ、まるけえてぃなあや、あまくまあ、平安(ふぃん)()物言(むに)いぬ()ちゅる(くとぅ)んあいびいたん。

(わあ)()ちょおる(はなしい)や、()(たあ)が、()ちょおる(はなしい)とぅん、また、(むる)っさが沙汰(さた)そおる(はなしい)とぅん、むさっとぅ、裏腹(うらはら)どぅやんどお。()(たあ)や、()ぎい(すう)や、(いら)あやんでぃちどぅ()ちょおる(はじ)やしが、(いらあ)ぎさそおる(かあぎ)とお、似合(のお)らな、でえじな、(ちむ)(じゅ)らん(ちゅ)やたんどお」

 (ふか)三人(みっちゃい)や、眉突合(まぬくちちゃ)あち、靖(はなしい)んかい耳広(みみふぃる)らみやびたん。

(じち)え、いちゃんだん、()ぎい(すう)や、戦後(いくさあとぅ)(とぅじ)ぬウタぬ(はた)んかい(むどぅ)たい、(むとぅ)びれえぬ(はた)んかい()じゃいそおたる(わけ)えあらんどお」

 靖ぬ物言(むぬい)(よう)や、其処(んま)んまい(をぅ)(たあ)とぅん()わとおんえんそおいびいたん。

(むとぅ)びれえぬ真鶴(まじる)とぅ、(ゐなぐ)(ぐぁ)二人産(たいな)ちゃる事迄(くとぅまで)戦後(いくさあとぅ)(んじゃ)(ゆい)どぅやくとぅ、仕方(しかた)んならん(くとぅ)やたしが、うぬ(だん)()ぎい(すう)や、大事(でえじ)なんでぃん、肝痛(ちむや)まち、(ちむ)ん肝ならんたる心地(しんち)やたんでぃどお」

「…」

()が、うりん、西原(にしばら)んかい(をぅ)()達主(たあすう)から()ちゃる(はなしい)どぅやしがよお。だあ、()ぎい(すう)や、(むとぅ)(とぅじ)(とぅくる)んかい(むどぅ)てぃ(あとぅ)からん、真鶴(まじる)とぅ()ちぇえる(くぁ)(ちゃあ)(くとぅ)なかい、(やあ)から()じてえ、()ち泣ちそおたんでぃどおやあ、うふぃぬ(ゐきが)てぃらむんぬ」

 うり()ちち、陽子や、ちゅうちゃん、(なだ)くるくるうなとおる風儀(ふうじ)やいびいたん。智子(までぃ)ん、目赤(みいあかあ)なてぃ()ちょおいびいたん。

「やんなあ、はっさ、うぬ(くとぅ)ん又、(うふ)どぅんもおいな(くとぅ)やっさあ」

 四郎(しらあ)びけんが、(いれ)えやびたん。

「あり、とお、コーヒーん、なとおんどお。()まがちいなあ、(はなしい)出来(でぃき)らせえ」

「にへえどお」

「にふぇえでえびる」

 智子びけんや、ししい言葉(くとぅば)使(ちか)やびたん。

果報(かふう)し」

んでぃ、()ちから、靖や、(また)()びやあさびたん。女二人(ゐなぐたい)や、きっさ、涙落(なだう)とぅすし、けえ(わし)りとおる風儀(ふうじ)やいびいたん。

()(たあ)や、()ぎい(すう)(くと)お、如何(ちゃぬ)風儀(ふうじ)しが、()ちょおらあ()からのおあしが、だた、肝浅(ちむあさ)さんでぃ()ゃあま、沙汰(さた)そおしが、(わあ)があ、(けえ)てえ、()ぎい(すう)がる、肝痛(ちむいちゃ)さる」

 四郎(しらあ)や、(なま)あ、(くち)があ(ぶら)ちゃびたん。

「へえ」

(たし)かに、()ぎい(すう)(わか)さいにいや、いっぺえ、(ゐなぐ)(ちゃあ)なかい、(ぬず)まってぃん、なあんあらん、まちぶいかあぶいさってぃ、(ふし)がらんたしえ防がらんたしがてえ」

 うぬばすびけんや、靖や薄笑(うすわれ)(ぐぁあ)さびたん。

「あっさ、()ぎい(すう)やれえ、(わらび)ぬばすから、いちゃっさぬ前男(めえゐきが)やたくとぅ。(あり)んかい、うち()りてぃ、与勝(かっちん)半島(ゆなぐしく)びけんからんあらん、かあま具志川(ぐしちゃあ)まんぐらからん(ゐなぐ)(ちゃあ)ぬ、()ぎい(すう)んかい()()いが()いまんどおたんどお」

()ぎい(すう)んでぃ()ちん、(くぇ)えてえ(をぅ)らな、うちゃとおる丈程(たきふどぅ)どぅそおいびいたる。(るく)十歳余(じゅうあま)てぃん、いっぺえ、(ちゅ)二才(にせえ)やたる(うむ)(かじ)(ぬく)とおいびいたん。

(とぅじ)とぅめえてぃからん、(ゐなぐ)なかい、()てぃ(くぁ)あたあなかい、(ふぃん)(まあ)いそおたる時期(じしち)んあたんでぃどお」

「あっさ、汝身(いゃあみ)え、なあ、(ちゅ)()けえちゃい、(わら)あちゃいし、()ってえ、(わら)てぃが()むらあ、()ちが()むらあ?」

やしが、森根靖主(むんにいやすしすう)や、真肝(まじむ)面目口(ちらみいくち)んかい(むどぅ)ちょおいびいたん。

()ぎい(すう)兄弟(ちょう)姉妹(でえ)(ちゃあ)ん、兄弟(ちょう)姉妹(でえ)(ちゃあ)、てえ。だた、勘違(かんちげ)えし、はごうささあに、意地(いじ)ぬしいららな[7]()ぎい(すう)とお、(ふぃざ)()っちゅんねえ、なたせえやあ」

「『沙汰(さた)(ぬく)ゆん[8]』でえ、(じゅん)に、うぬ(くとぅ)どぅやる(はじ)やあ」

「とお、今日(ちゅう)や、いいばす、靖義理(やっ)(ちい)(ばなしい)()ちぇえさ。いいばす、此処(くま)んかい、()ちぇえさ。()ぬん、勘違(かんちげ)えそおるまま、(やあ)んかい()えたんどおでえ、なあ、大事(でえじ)すてえさ」

四郎(しらあ)ん、靖(はなしい)んかい、片心(かたくくる)諸心(むるくくる)(ゆる)さびたん。

()()ぬん、うんな(はなしい)や、今迄(なままでぃ)(たあ)んかいん、さんたんどお。かたがた、今先(なまさち)()(らあ)が麻里子ぬ(はなしい)すたくとぅどぅ、()ぬん、うんな(はなしい)そおる」

「なあふぃん、うんな(はなしい)や、(めえ)(かた)れえ()むたるむん」

 陽子や、いふぃえ、口尖(くちとぅ)らちょおいびいたん。

「いいゆい、()(たあ)や、(わん)やかん、()ぎい(すう)近間柄(ちかまがら)やくとぅ、(わん)やかん、()かとおる(はなしい)がやらんでぃる(うむ)とおたとおてぃ」

 四郎(しらあ)や、今迄(なままでぃ)(なげ)えさ()からんたる(くとぅ)()かいぎさあ(まあ)ゆんねえ、(うむ)やびたん。

 (ちむ)(すく)(くむ)()(ぐくる)

「ふぃるましいむんやしが、()ぎい(すう)が、()いっ(ちゅ)やる(くと)お、(むら)(ちゅ)(ちゃあ)はじみ、(かっちん)(ゆなぐしく)(じゅう)(ちゅ)(ちゃあ)ん、()かとおたんどお」

 靖(はなしい)や、()しまいぎさあさがやあんでぃ、(うみ)いねえ、また、(ぬう)がなぬ拍子(ひょうし)なかい、()びやあする模様(むよう)んやいびいたん。

「あひんじる[9]村会(すんくぁい)議員(じいん)ぬん、十年(じゅうにん)(ゑえだ)んむとぅうとおてえさ。また、(やあ)んじ、(ふだ)()りぬ加勢(かしい)さあ(たあ)御取(うとぅ)()ちいする(ゐなぐ)(てぃ)がねえさあん、(かわ)てぃ、まんどおたんどおやあ」

(なま)ぬまあどお、陽子が、()かたん()うなあさあに、話継(はなしいち)じゃびたん。

()ぎい(すう)や、(わか)さいにいから、(むら)(あし)びぬ大原(ううわら)按司役(あじあく)さる(たみ)なかい、()()(ぐしく)(まじり)んじ、名言(なあゆ)るっ(ちゅ)けえなやあに、また、()くぃいん(たか)さたくとぅん、やしえやしがてえ」

 ()ぎい(すう)沙汰話(さたばなしい)や、何時(いち)(みい)がやら、大ぎい主ぬ()(ばなしい)んかい、けえ、なとおびいたん。(ゐなぐ)(いいらあ)(ばなし)びけんやれえ、いふぃえ、にりてぃ(くさ)りとおたる(はじ)やしが、()あちょおる(ちゅ)()み話ん、するむぬやいびいん。

 やしが、如何(ちゃ)(よう)(はなしい)やらわん、(ちゅ)(やあ)んかい、長居(ながいい)やないびらん。

「とお、()(たあ)や、なあ、(やあ)とぅめえいがやあ」

「いいゆい、いななあ?。だあ、コーヒー、()(けえ)ら」

「あらん、()むん、なあ、コーヒーん、(はなしい)ん、ちゅふぁあらなとおるむぬ、また、(くぁ)(ちゃあ)ん、(んけ)えらんとおならん時分(じぶん)ぬんけえなとおい」

「やんなあ、(ちゅう)やいいばすたてえさ。まるけえてえ、()(てえ)兄弟(ちょう)姉妹(でえ)(やあ)(みぐ)てぃ()うんでえ」

 うぬばす、陽子達家(たあやあ)仏壇(ぶちだん)(すば)んかい(かざ)らっとおたる柱時計(はあやとぅちい)ぬ、四時鳴(ゆじな)する(うとぅ)()かりやびたん。

「んちゃ、(じゅん)に、時間(じかん)けえなとおるむん」

()(てえ)島尻(しまじり)んかいや、()ぎい主達(すうたあ)西原(にしばら)(とぅう)らんようい、照間(てぃるま)新道(みいみち)なあでぃい(みぐ)てぃ()ちゅしどぅましどお」

「あまがる早道(ふぇえみち)やがやあ」

「早道ん近道(ちかみち)んあらんしが、(んかし)から、あい()っとお()えやあ、荼毘(だび)場合(ばあ)や、()ゃる(むどぅ)からあ(むどぅ)ゆるむのお、あらんでぃち」

終わい

 



[1] 「ゆうべえ」=一番目の妾。二番目の妾は「はたべえ」という。首里語では「すば」。

[2] 我が=都市部では衰退した語。

[3] 映画=「影踊(かあがあをぅど)い」とせず、「映画」を用いた。

[4] 狭やあしいちぇえ=ここでは「密集地」。

[5] 「やひが」=「やしが」の東部勝連語。

[6] 「西原物言い」=那覇語と首里語に似る。

[7] 「意地ぬ〜」=「腹に据えかねて」の慣用句。

[8] 「沙汰残ゆん」=死後も噂される。

[9] 「あひんじる」=だからこそ。与勝地域の方言。