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うちなあぐちの表記 (週刊レキオ掲載 2006.07.20) | ||
日本語版 | うちなあぐち版 | |
〜書きことば的表記を〜 現在、沖縄語の散文表記においては、長音を棒引き記号「ー」で表記することが「一般的」である。その源流を廃藩置県の翌年に作られた日本語教科書『沖縄対話』(沖縄県学務課)に求めることができる。同書は日本語習得を目的としたものであるから、日本語部分においては当然、棒引き記号の使用はない(例:アリガタウ)が、沖縄語部分においては棒引き記号を混用し外来語扱いと同じ表音表記となっている(例:ミヘーデービル)。 後に国語の表記が片仮名から平仮名に変換されると沖縄語の表記も平仮名中心になるが、棒引き記号の使用は、検証されることなく、そのまま残され、以後の沖縄語表記を方向付ける。組踊までは大和語に準じていた琉球語表記は、その姿を変え風格を失ったのである。棒引き記号を使う表記は沖縄語撲滅政策下でできた簡便なものだったのであり、沖縄語の継承が叫ばれる今日、見直すべき時期にきている。日本語表記法が姉妹語である沖縄語の表記にも有効で合理的である。 現代の日本語表記法における長音表記については、ひらがな表記の場合は原則として前の語の母音を連ね、表音専用のカナ表記の場合は棒引き記号の使用が許される。例えば、「オカーサン」の「カ」はア段音なので、棒引き記号の代わり「あ」を連ねて「おかあさん」とすることは周知の通りである。 だが、現在の大方の沖縄語表記においては、前述のような歴史的経緯もあって、棒引き記号が漢字や平仮名と混用されている結果、次のような不具合を抱えている。 一、「小禄ー日本(ウルコーニッポン)」、「波之上ぬ波ー(ナンミンヌナメー)」における、「ー」は漢数字の「一」や「乃至」など別の記号としても使用されるものなので紛らわしい。この場合、「小禄お日本」、「波え」と表記した方が記号解釈の紛らわしさを排除することにもなり、次いで、「小禄(名詞)+お(格助詞)+日本(名詞)」、「波(名詞)+え(格助詞)」などと語の成り立ちも説明もできる。また、語や語頭が「ー」となる語の存在を排除することにもなる。 ニ、「うちなー」は古書では四音節表記であることから、「うちなあ」が妥当である。同様に、「かわ(川)」、「みや(庭)」(いずれも『おもろさうし』表記)も「かー」、「なー」より、「かあ」、「なあ」が原音(二音節)に近い表記である。 三、「むっちーけー」も「むっちいけえ」とすれば「持っち+行けえ」であると説明できる。「ちー」は「むっち」(「持っちゅん」の接続形、補助連用形ともいう)の「ち」と「いけえ」の「い」、つまりそれは、「ち+い」の合体音であって「ち」の長音ではない。日本語においては長音含むすべての音(音節)を一字づつで表記するため、自ずと合体音の復元にも有効なのである。 四、「てーげー(大概)」、「ぶりー(無礼)」などの漢語についても「てえげえ」、「ぶりい」などと「原音節」に近い表記が好ましい。 沖縄語の書き言葉をどうように確立していくのかは、沖縄人の沖縄語に対する姿勢を表わすものでもある。 |
〜書ちくとぅば的表記〜 なま、うちなあぐちぬ散文表記え、棒引ち記号「ー」なかい長音表記すぬくとぅが「一般的」やん。うぬ源流や廃藩置県ぬ翌年(ゆくどぅし)んじ作らったる日本語教科書『沖縄対話』(沖縄県学務課)んかいあぬくとぅぬ分かゆん。くぬ書物(しむち)や日本語ぬ習得ゆ目当(みあ)てぃとぅそおるむんやくとぅ、日本語部分んじえ、当たい前(めえ)ぬくとぅ、棒引ち記号や使あらってえをぅらん(例:アリガタウ)しが、沖縄語部分んじえ棒引ち記号ゆ混んきやい、外来語扱(あちけえとぅ同(い)ぬ表音表記とぅなとをん(例:ミヘーデービル)。 後々(あとぅあとぅ)んじ、国語(くくぐ)ぬ表記が片仮名から平仮名んかい変わたれえ沖縄語ぬ表記ん平仮名中心んかい変わてぃんじゃるむんやしが、棒引ち記号ぬ是非(じいふじ)や、検証さりいるくとぅんねえらな、うぬまま残(ぬく)さってぃ、うりから後ぬ沖縄語表記ぬ形とぅなてぃんじゃるむぬやん。組踊(くみをぅどぅい)までえ大和語んかい似しとおたる琉球語表記え、うぬ姿変えてぃ風義(ふうじ)失たるばすやん。棒引ち記号使ゆる表記え沖縄語撲滅政策ぬ下(しちゃ)んじ、大概(てえげえ)小なかいなたるむんどぅやれえ、沖縄語ぬ継承があびらっとをる今、考え直(のお)しびちい時とぅなとをおん。日本語表記法が姉妹語やる沖縄語ぬ表記とぅしん有効やい合理的んやん。 現代(なま)ぬ日本語表記法んじぬ長音表記にちいてえ、ひらがな表記ぬばあや原則とぅしち前(めえ)ぬ語ぬ母音(ぶいん)ゆ連(ちら)にやい、表音専用ぬカナ表記ぬばあや棒引ち記号使てぃんしむん。例(たとぅ)れえ、「オカーサン」ぬ「カ」やア段音やくとぅ、棒引ち記号ぬ代わい「あ」連にてぃ、「おかあさん」んでぃちすぬくとお、知っちをる通(とぅう)いやん。 やしが、現在ぬ大概ぬ沖縄語表記うとおてえ、前(さち)言ちゃる通いぬ歴史的経緯んあてぃ、棒引ち記号が漢字とぅか平仮名んでえとぅ混んきてぃ使あらってぃをぅるたみなかい、次ねえそおる不具合持(む)っちょをん。 一、「小禄ー日本(ウルコーニッポン)」、「波之上ぬ波ー(ナンミンヌナメー)」うとおてぃぬ、「ー」や漢数字ぬ「一」とぅか「乃至」んでえ別ぬ記号とぅしちん使あらっとをくとぅばっぺえやっさん。くんなばあや、「小禄お日本」、「波え」んでぃち表記しいねえ、記号解釈ん、ばっぺえらんてぃんしむい、次いでぃ、「小禄(名詞)+お(格助詞)+日本(名詞)」、「波(名詞)+え(格助詞)」ねえし、語ぬ成い立ちん説明んなゆん。また、語とぅか語頭が「ー」とぅないる語が、あてえならんくとぅとぅすぬくとぅんかいんなゆん。 ニ、「うちなー」や古書んじえ四音節表記やるくとぅから、「うちなあ」がる実当(じんとう)やる。同ぬぐとぅ、「かわ(川)」、「みや(庭)」(じるん『おもろさうし』表記)ん「かー」、「なー」やか、「かあ」、「なあ」がる原音(二音節)んかい近さる表記やん。 三、「むっちーけー」ん「むっちいけえ」んでぃちしいねえ、「持っち+行けえ」やんでぃち説明なゆん。「ちー」や「むっち」(「持っちゅん」ぬ接続形、補助連用形んでぃんゆん)ぬ「ち」とぅ「いけえ」ぬ「い」、いいどぅんしえ、うりえ「ち+い」ぬ合体音どぅやる、「ち」ぬ長音やあらん。日本語うとおてえ長音ぬん合あち、むるぬ音(音節)ゆ一字なあ一字なあ表記すぬたみなかい、なんくる合体音復元すぬくとぅにん有効やるばすやん。 四、「てーげー(大概)」、「ぶりー(無礼)」んでえぬ漢語(くゎんぐ)にちいてぃん「てえげえ」、「ぶりい」ぬぐとぅし、「原音節」んかい近さる表記がるましやる。 沖縄語ぬ書ちくとぅばゆちゃぬふうじいし立てぃてぃいちゅがんでぃゆるくとお、沖縄人ぬうちなあぐちに対する姿勢表わするくとぅんかいんないるむぬやんでぃち考えびちいやん。 |